コラージュ初心者向け:作品を始める前に知りたい背景・下地の選び方と作り方
コラージュ制作、まず「何を貼るか」より「何に貼るか」を考えてみる
コラージュ制作に興味を持ち、「よし、始めてみよう!」と思っても、「どんな素材を集めようか」「どういう風に切って貼ろうか」と、素材や貼り方に目が行きがちではないでしょうか。もちろんそれらも大切ですが、意外と見落とされがちなのが、「何を土台(背景・下地)にするか」という点です。
作品の最初の印象を決めたり、貼る素材を引き立てたり、全体の雰囲気を統一したりと、背景や下地はとても重要な役割を担っています。今回は、コラージュ初心者の方に向けて、どのような背景や下地を選べば良いのか、そして簡単な作り方についてご紹介します。
なぜ背景・下地が重要なのか?
コラージュは、様々な素材を組み合わせて一つの画面を作り上げるアートです。その「画面」のベースとなるのが背景・下地です。
- 作品の土台となる: 貼る素材を固定するだけでなく、作品全体の構造を支えます。
- 雰囲気を演出する: 背景の色や質感によって、作品が持つ印象は大きく変わります。例えば、明るい色の画用紙を使えばポップに、古い紙を使えばレトロな雰囲気に。
- 素材を引き立てる: 貼りたい素材に合わせて背景を選ぶことで、素材の魅力をより引き出すことができます。
- 制作のガイドラインになる: どんな背景を選ぶかによって、次にどんな素材を貼るか、どんな色を使うかといった方向性が自然と見えてくることもあります。
何も決まっていないまっさらな状態から始めるのは少し心許ないかもしれませんが、最初にどんな背景にするか考えることで、その後の制作がスムーズに進むことがあります。
初心者におすすめの背景・下地の種類と選び方
まずは手に入りやすく、扱いやすいものから試してみましょう。
1. 紙類
最も身近でポピュラーな素材です。
- 画用紙・ケント紙: 表面が滑らかで、インクや絵具での着色もしやすいです。厚みがあるものを選ぶと、貼る素材の重さで紙が波打つのを防げます。白だけでなく、色画用紙を使うのも手軽に雰囲気を変える方法です。
- 厚紙・ボール紙: より強度があり、立体的な素材を貼る場合にも安定します。ダンボールの平らな面なども活用できます。
- 水彩紙・アクリル絵具用キャンバスボード: 絵具を塗ることを前提とした紙やボードです。特に水彩紙は独特のテクスチャがあり、そのまま下地として活かすこともできます。キャンバスボードは小さいサイズなら手軽に手に入り、本格的な見た目になります。
選び方のポイント: * 厚さ: ある程度の厚み(ハガキくらいかそれ以上)があると、のりや絵具の水分でシワになりにくいです。 * 色: 最初は白や生成りなど、どんな素材にも合わせやすい色がおすすめです。慣れてきたら、暖色系や寒色系の色画用紙で遊んでみましょう。 * 表面: 滑らかな紙、凹凸のある紙(エンボス紙など)など、表面の質感でも印象が変わります。
2. 木材
薄いシナベニヤ板やMDF材など、ホームセンターや画材店で手に入る木材も面白い下地になります。
- 特徴: 丈夫で反りにくく、紙とは違う温かみのある質感があります。絵具のノリも良く、やすりで表面を整えることも可能です。
- 注意点: 紙に比べると少し値段が高めだったり、カットが必要だったりします。
3. 既にあるもの
使い終わったお菓子の箱、厚めのノートや手帳の表紙、空き箱など、家にあるものを再利用するのも手軽でエコな方法です。
- 特徴: 新たに購入する必要がなく、手軽に始められます。既存の形やデザインを活かすことも可能です。
- 注意点: 素材によっては表面がツルツルしていて貼りにくかったり、耐久性が低かったりすることがあります。
私の経験から: 私は最初、家にあった厚めのスケッチブックの紙や、お菓子の空き箱のフタなどを使っていました。特別なものを買わなくても始められるので、まずは手元にある「しっかりした紙っぽいもの」から試してみるのがおすすめです。百円ショップの色画用紙や厚紙なども十分使えますよ。
簡単な下地作りのアイデア
ただの紙や板でも良いのですが、少し手を加えるだけで作品の深みが増します。
1. 色を塗る
最もシンプルで効果的な方法です。
- 使うもの: アクリル絵具、ポスターカラー、水彩絵具、インク、マーカーなど
- 方法:
- ベタ塗り: 下地全体を好きな色で均一に塗ります。単色でも印象は大きく変わります。
- 重ね塗り: 乾かした上から別の色を重ねて深みを出したり、部分的に色を変えたりします。
- スポンジや布で叩く: スポンジや布に絵具を少量つけ、下地を軽く叩くように色を乗せると、ムラのある面白いテクスチャになります。
- 水彩絵具でニュアンスを: 水彩絵具を薄めに溶いて塗ると、水が作る自然なムラやグラデーションが生まれます。
2. 紙を貼る
使いたい素材とは別の紙を先に貼って下地にする方法です。
- 使うもの: 包装紙、新聞紙、雑誌の切り抜き、英字新聞、古い楽譜、折り紙など
- 方法:
- 全面貼り: 下地全体を覆うように紙を貼ります。柄物や文字が書かれた紙は、それ自体がデザインの一部になります。
- 部分貼り: 下地の一部に紙を貼ってアクセントにしたり、複数の紙を重ねて複雑な層を作ったりします。
3. その他の簡単なテクスチャ作り
- のりやメディウム: ジェルメディウム(絵具に混ぜて使う透明なのり状のもの)などを部分的に塗って乾かすと、透明な盛り上がりができます。木工用ボンドを薄く塗って乾かすだけでも少し質感が変わります。
- 布切れ: 使わない布の切れ端を部分的に貼ることで、異素材の面白さを加えることができます。
私の実験ノートより: 私はよく、アクリル絵具でざっくりと色を塗ってからコラージュを始めることが多いです。特に、水で薄めたり、別の色を少し混ぜてみたりして、完璧に均一ではないムラ感を楽しむのが好きです。完全に乾く前にティッシュで軽く拭き取ったりすると、面白いかすれ具合が出たりもします。正解はないので、まずは小さな紙で試し塗りをしてみるのが良い練習になります。
まとめ:まずは手軽な下地で始めてみよう
コラージュ制作の最初のステップとして、背景・下地について考えてみました。難しく考える必要はありません。まずは、
- 家にある厚めの紙や空き箱を用意する。
- そこに色を塗ってみる(絵具がなければ色鉛筆やクレヨンでも良い)。
- あるいは、気に入った包装紙や新聞紙を貼ってみる。
といった、ごく簡単なことから試してみてください。どんな下地を選ぶか、どんな下地を作るかによって、その上に貼る素材の選び方や全体のイメージも自然と変わってきます。
この「私のコラージュ制作ノート」では、私の個人的な制作プロセスや実験の記録も交えながら、コラージュ制作の楽しさやヒントをお伝えできればと考えています。次回の記事では、今回の下地の上に、具体的にどんな素材をどう貼っていくか、という点についてもお話しできればと思います。
まずは、お気に入りの背景・下地を一つ作るところから、コラージュ制作の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。